新米の一歩目

就職をきっかけに本当にやりたいことを見つけた新卒、映画の魅力を人に伝える仕事のために邁進!アメコミ、映画、海外ドラマ、ゲーム、散歩、いろいろ好き。

アーティストか、その中身か

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「ブロードウェイと銃弾」(原題 BULLETS OVER BROADWAY) 主演 ジョン・キューザック

 

  時は1920年代、主人公デビッドは劇作家。彼はまた1つ、新たな作品を世に送り出そうと劇場に掛け合いますが、資金不足でその願いも消え去ります。

  しかしある時突然、劇場がスポンサーを得てデビッドの劇が実現することになります。スポンサーになったのはニックという男。その男はなんとマフィアのボスでした。ニックがスポンサーになったのにはある理由がありました。それはニックの女オリーブのワガママによるもの。スターに憧れるオリーブの願いを叶えるため、オリーブに重要な役を与える条件で出資したのでした。

  オリーブには女優の才能は皆無でした。その酷さはセリフを覚えるだけで頭痛を起こす始末。しかしオリーブの出番を減らそうものなら常に見張っているニックの部下チーチが脅しにかかります。さらにオリーブの周りを固める俳優陣は元スター女優ヘレンや一時期激太りしていた男優ワーナーなど曲者ばかりです。さらにデビッド本人まである大きな秘密を抱えてしまいます。果たして、舞台は成功するのでしょうか…

 

  ウディ・アレンによる監督作品である今作。20年以上前の名作です。ミュージカル化もされています。しかも超偶然かつタイムリーな事に来年には日本に初上陸します。デビッド役を浦井健治、チーチ役を城田優が演じます。面白かったし観に行こっかなぁ…

  上記で日本版のデビッドとチーチ役を紹介した事から分かる通り、実はこの物語はチーチが重大なキーパーソンとなっています。始めはチーチがそんなに重要なポジションに就くなんて思ってもみませんでしたよ。

 

  登場人物達は皆曲者であるため、舞台が開演されるまで様々な問題が展開されます。デビッドはエレンという愛する妻がありながら、アーティストととしての自分を分かってくれるヘレンに恋をします。また、ワーナーはニックの目を盗んでオリーブと密会し始めますし、ワーナーはぶくぶく太ってゆきます。

  しかし今作で1番の焦点になるのはデビッドとチーチの正反対の描かれ方です。始めは粗野で暴力的で口も態度も最悪なチーチ、しかし稽古の最中、チーチが口出ししたアイデアは皆の心を打ちます。そしてやがて、チーチもまた、舞台を愛する男だということが分かるのです。

  デビッドもチーチと舞台を愛する男だというのに、何が正反対なのか?それはチーチが真のアーティストだった事にあります。チーチはデビッドに口出ししてどんどん洗練されてゆく台本に誇りを持っていました。チーチにとって舞台は"キーキーうるさいオリーブを守る場所"から"おれの舞台"へと変わってゆきました。それほどまでに自らの作品に誇りをもっていたチーチにとって、舞台に傷が付くことは何に変えても許されるものではありませんでした。チーチにとって作品は絶対であり、作品の前ではモラルすらも無視されるべきものでした。一方でデビッドはアーティストでありながら1人の男でした。デビッドは作品に情熱を注ぐ一方で愛に生きていました。デビッドは妥協という言葉を知っていました。アーティストである前に人なのか、人である前にアーティストなのか。その違いは2人の命運を左右しました。

  デビッドかチーチか。これは作中に限らず現実世界でも同じことが言えるでしょう。一流の成功者、一流のアーティストと呼ばれる人たちはやはり何処かで人間である事を捨てているのだと思います。おそらく、人間といえる部分のうちの何処かを捨てたものだけが見ることができる世界があるのでしょう。貴方はどちらで在りたいですか?人か、それとも…