新米の一歩目

就職をきっかけに本当にやりたいことを見つけた新卒、映画の魅力を人に伝える仕事のために邁進!アメコミ、映画、海外ドラマ、ゲーム、散歩、いろいろ好き。

魔法使いではないけれど

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イリュージョニスト」(原題 L'Illusionniste) 主演 ジャン=クロード・ドンダ(声での出演)

 

  1950年代、タチシェフという初老の手品師はヨーロッパを巡業して生活していた。といっても、彼の行う手品は帽子からウサギを出したり、トランプを花に変えたりする"古臭い"手品で、評判も収入もからっきしだった。

   ある日、タチシェフはスコットランドの離島にある小さな小さなパブで手品を披露した。そこはまだ満足に電気も通っていない町で、人々は古臭い手品に大いに喜んだ。

 

  パブではアリスという少女が働いていた。とても見すぼらしい姿の彼女は始めて見た手品に感激し、タチシェフを魔法使いだと信じ込んだ。タチシェフが島を離れる時、アリスはこっそり彼の跡をつけた。アリスは魔法使いと共に行くことを(勝手に)決意したのだ。

  始めこそタチシェフも困り果てたのだが、故郷の娘を思い出し、彼女と共にエディンバラの安宿で生活することを決意した。しかし人を1人養うのは容易な事ではない。タチシェフは手品師とアルバイトの二足の草鞋を履く事になる。

  時はゆっくりと流れ、アリスはどんどん女性らしく変貌を遂げていっていた。一方で宿の芸人仲間はゆっくりと姿を消していっていた。そして、タチシェフにも、決断の時が近づいていた。

 

  数々の賞に受賞&ノミネートされている本作「イリュージョニスト」。ジャック・タチという監督の死後発見された脚本を基に作られています。

  今作はあぁ、フランスだなぁって感じの画風で描かれるアニメ映画。背景やモブキャラにまでしっかり細かく描かれており、丁寧さが伝わってきます。台詞がかなり少ない作品なのですが、動きも分かりやすく、丁寧で感情がしっかり伝わってきます。

 

  今作のラストは100%のハッピーエンドではありません。

  上に住んでいたピエロのおじいさん、彼は物語中断で自殺を試みている際にアリスにシチューを差し入れされ、美味しそうに平らげました。しかしその後どうなったかは分かりません。シチュー一つで人生をやり直せるほど立ち直れるようには思えませんが、成功しないとも限りません。

  近くの部屋だった腹話術師のおじいさん、売られた人形は最終的に無料までに落ちてました。本人も、ホームレスになっていました。

  そしてタチシェフ、彼のラストはここでは書きません。しかしタチシェフの生き方は最後の鉛筆のマジックが物語っているのでしょう。短くなった鉛筆を落として探す小さな子ども、先に鉛筆を見つけたタチシェフは手の中に、自分の鉛筆と子どもの鉛筆を隠しました。そして手品を交えて渡した鉛筆は、短い鉛筆でした。自分の長い物を渡さなかった事にはどんな意味があるのでしょう。僕は、タチシェフの介入しすぎない気遣いが見てとれました。自分の長い鉛筆の方が良いものなのは明白です、しかし幼い子どもの鉛筆には彼女なりの物語があったかもしれません。タチシェフは人に驚きや笑顔を与えますが、過剰な介入はしないのでしょう。そんなタチシェフにとって、アリスは介入し過ぎた存在なのかも知れません。だからこその、最後の行動なのかもしれませんね。