【アメコミ感想】ヴィジョン1
あらすじ
人類の殲滅を目論む狂気のアンドロイド、ウルトロンの手で生み出されながらも、創造主に背を向け、正義の列に名を連ねた人造人間《シンセゾイド》ヴィジョン。最も高潔なアベンジャーとして仲間と周囲の信頼を勝ち得てきた彼は、ホワイトハウス付のアベンジャーとして首都ワシントンD.C.に転任したのを機に新たな生活を始める。首都郊外に家を求め、同じく人造人間の妻と娘、息子を迎え、《人間らしい》暮らしを送ろうと決心したのだ。
かくして、合衆国の心臓部で働くエリート達が暮らすヴァージニア州アーリントン暮らしが始まった。しかしある事件をきっかけに彼らの生活の歯車は狂い始める。そして恐るべき悲劇がー
元CIA議員という異色の経歴で知られる気鋭のライター、トム・キングによる、奇妙で奇抜で危険なサイコロジカル・ファミリーホラー。21世紀のマーベルコミックスを代表する稀代の傑作がついに登場!
本書より引用
概要
こんちは!Shoindyです!お久しぶりでございます!12月はアメコミを購入せず、今月多忙だったため、遅れに遅れての更新となりました。さて、ここ2か月の間に色々な情報が増えたMCU、その中に公開された中に新ドラマ「ワンダヴィジョン」の映像もありました。ワンダがスカーレット・ウィッチの格好をして登場したことで微妙に話題になりました。
そんな「ワンダヴィジョン」の元ネタになったとされる作品がこのコミックス「ヴィジョン」だったりします。ちなみにドラマ「ワンダヴィジョン」のジャンルはシットコム(シチュエーションコメディ、フルハウスとかビッグ・バン・セオリーなどのジャンル)に分類されています。そして元ネタの「ヴィジョン」は、上記あらすじによるとサイコロジカル・ファミリーホラー…もう嫌な予感しかしませんね。
実は、本書は表紙の強烈さから、アメリカでリーフが出た時から読んでみたい作品でもありました。さらにアイズナー賞を受賞していることもあり、非常に期待が高まっている一冊でした。実際読んでみて、いつもと全く違う不気味なストーリーで非常に楽しかったです。
普通であるが故の異常と生まれる綻び
「ワンダヴィジョン」の元ネタと紹介したものの、今作ではワンダの出番はほとんどありません。ワンダと結婚していたこともありますが、それは完全に別の話。今回登場するのは、ヴィジョンの人間らしさ計画の為に登場した妻と、双子の子ども達。どれがどのポジションかはタイトル画面を見ていただけると分かるかと思いますが、それぞれ家主のヴィジョン、妻のヴァージニア、長男のヴィン、長女のヴィヴという名前です。なお、長女のヴィヴは僕が好きなチームであるチャンピオンズにも参加しており、ハルク(アマデウス)とキスしたりします。カマラ差し置いてモテてますな。まぁカマラは学級委員系ですからね。
今作の見どころはそんなヴィジョン一家が”演じる”普通にあります。そしてその普通はあくまで人間らしさが欲しいが故の演技ですので、圧倒的な違和感を孕んでいるのです。例えば、”いい人そうだね”という第一印象の表現ひとつをとっても、彼らにとっては”優しそう”と表現する場合と大きく異なります。曰く、”いい人”は皮肉を込めて表現する事があるため、第一印象の時点ではどちらにもなり得る”いい人”という表現の方が人間らしいそうです。人間はそこまで考えてないと思う(笑)
他にも”子どもはその後には何になればいいのか”といった、人間でないからこそ描かれる疑問が描かれます。それが困惑しつつもどこか平凡を楽しんでいる節があるのがまたちぐはぐな感じですね。ご近所さんとの交流を喜びつつももらったクッキーを捨てていたりね(表面上の関係の表現ではなく、喜んでいるのにシンセゾイドであるが故にその行動に出ている)。
しかし、事件は起きます。それはヴィランであるグリム・リーパーの襲撃。ヴィジョンが不在の間にそれは起き、ヴィヴは損傷。ヴァージニアは必死の思いでグリム・リーパーを殺害します。しかし、ヴァージニアにとってもそれは想定外。彼女はグリム・リーパーの遺体を庭に埋め、事実を隠蔽します。ですが、その陰にはその一部始終を見る者の姿が…
そもそも人間らしさ、シンセゾイドらしさの定義が存在しているのかどうかすらよくわからなくなりそうですが、ヴァージニアが遺体を隠した時点で、ヴィジョン一家は人間に近づき始めたように感じます。事実の隠蔽が合理的ではないはもちろん、ヴィヴの復活の為に自身の身を危険に晒すヴィジョンや、ヴィヴをバカにされて同級生に手を出してしまうヴィンなどだんだんと人間くささが現れ始めます。ぁ、そこにはスーパーパワーが伴うのですが…
最高に人間臭かったのはヴィジョン夫妻がヴィンの暴力により校長先生に呼び出しを喰らうシーン。
「私はアベンジャーズのヴィジョンだ。この惑星を37回救ってきた。あなたの生活。あなたの呼吸。あなたの心臓が打つ鼓動…全て私のおかげだ。」 ヴィジョン-校長室にて―
最高に人間くさいけど最高にヒーローらしくないセリフです。決して自分達の活躍を鼻にかけないヒーローですが、息子を守るためならば恩を売ることもやぶさかではないというヴィジョンの強い愛を感じます。
物語は後半へ
さて、こんな不気味なヴィジョン一家の物語は、グリム・リーパーの真相をヴィジョンが知ったところで終了します。続きは翌月の発売。”人らしさ”を求めたヴィジョン一家の行く先に待つ結末とは、一体どんなものなのでしょうか…今から期待でいっぱいです!
【おまけ】ちなみに、グリム・リーパーがヴィジョンを襲ったのはヴィジョンの脳波にあります。ヴィジョンの脳波はワンダーマンの物を使用しており、グリム・リーパーはワンダーマンの兄です。グリム・リーパーは弟の偽物であるヴィジョンと、その一家が許せなかったため、襲撃したのです。(ヴィヴとヴィンはヴィジョンとヴァージニアの脳波を混ぜて作られた)。