彼が壊れるまでの一から十まで
「バスターの壊れた心」(原題 BUSTER'S MAL HEART)主演 ラミ・マレック
あらすじ
森の中を駆け、警察から逃げ続ける男がいる。彼の名はバスター。何故彼は追われているのか、物語は10日前に遡る。
バスターはホテルの従業員だった。妻も娘もいる幸せな生活。目標は自分の家を持つことだ。ある夜、ホテルに奇妙な男が現れる。クレジットカードもIDもないためチェックインを拒否された男はバスターに2000年問題を語って聞かせる。「世界の終焉」だと。やがてバスターはいつまでも名乗らない男と共謀し、宿泊客の貴重品を盗むようになる。
バスターの生活と同時進行して髭面のバスターの生活も描かれる。髭面のバスターは他人の家で生活している。家中の絵画を反転させ、2000年問題をマスコミに訴える生活。時には漂流している姿も描かれる。髭面のバスターはホテルマン時代見ていたブラックホールの解説図をあらゆる方法で残している。
概要
サスペンス映画「バスターの壊れた心」
壊れた後のバスター(髭面)は余りにもホテルマン時代のバスターとの印象差が開きすぎていて、始め同じ人物だと気がつきませんでした。ヒントになるのが目元くらいなので。壊れたバスターの壊れ方は尋常じゃなく、上記した"絵を反転させる"といった異常行動はほんの序の口、侵入した他人の家の鍋に脱糞したり、帰ってきてしまった家主を縛ってもてなしたりしています。
しかしそれほどまでにバスターの心が壊れてしまうのも仕方がないのです。それほどまでにバスターを追い詰める悲劇が彼に襲いかかるのです。しかし、それがきっかけでバスターの心が壊れたかというとそうでもありません。悲劇が起きた直後はまだ彼は普通なのです。ではバスターの心が明確に壊れたきっかけは何なのか…実は、明確には明かされません。というより、今作は明かされないまま終わる部分が非常に多い!
例えば、何故バスターは警察に追われているのか?悲劇を起こした犯人は誰なのか?バスターの心が明確に壊れたきっかけは…?あらゆる謎が残されています。普通に考えると、バスターが悲劇を起こした犯人なのでしょう。そうでないとあらゆる説明がつかないです。でも何故?何故悲劇を起こしたのか?バスターからは動機が全く見受けられません。そう考えると、バスターは心が壊れたのではなく、初めからバスター(髭面)の人格は存在してたのでは無いかという考えに辿り着きます。それはバスターのセリフや描写からもそう捉えることが出来ます。ではどの時点から…?それはもう謎でしか無いです。
以下ネタバレバージョン考察
最後、何故バスターは消えたのか?バスターがそもそも存在していないとは考えられないです。では名乗らない男は?彼は何だったのでしょうか?バスターの妄想?それとも完全にあらゆる痕跡も残さず消えたのでしょうか?
僕は後者だと思いました。名乗らない男は世界にとってのバグを駆除する役割を持っていました、そしてそのバクとはバスターの事。これは作中で明かされます。最後にバスターが消されたのは名乗らない男のバク削除が成功した証なのでは無いでしょうか。そうなると、男の行動、目的は全てバスターの削除であると考えられます。ならば、上記では妻と娘の死(悲劇)はバスターが犯人と言いましたが、やはり名乗らない男が犯人であると考えざるを得ません。全てはバスターを消すため。その為にバスターの心を破壊する必要があったのでは無いでしょうか?心が壊れていなくても成功するのならすぐしているはずですしね。2000年問題などをバスターに聞かせたのもバスターの考え方を歪めるための可能性もありますね。考え方を歪められ、一切の痕跡のない男を犯人だと証言するバスター…壊れるには十分すぎます。
と、考えたらキリが無く、しかし考えちゃう楽しみがある一本でした!